その息尽きるまで時間は無限
蒸し暑い教室。

今日一番に教室で目に入ったものは、



花瓶だった。


近づくと、透き通ったガラス瓶に、同じく透き通った、美しい水の滴る百合の花があった。


私の机に。



花瓶をよけて、席に座る。 

教科書をランドセルから取り出し、机の中に入れようとすると、一枚の便箋が入っていた。 





そこには、丸文字でこう書き連ねてあった。






『濡沢衣様。  お先に申し上げます。  ご冥福をお祈りいたします。
すぐお亡くなりになられるでしょう?  お葬式、先にご予約したらいかがでしょう?』


下手くそな敬語。


「…」

あの4人の視線を感じる。

闇の中から自分の心臓を鷲掴みにする化け物のような、悪魔の視線。


便箋を手の中でぐしゃっと丸めた。

手汗が滲む。

「…」
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