警視正は彼女の心を逮捕する
 やがて、ある一枚の絵の前でぴたりと足を止める。

「鷹士さん?」

 どうしたのだろう。

 この絵、好きなんですか。
 その割には、絵より私を見つめている。

 怖い。
 獲物を狙っている鷹の目。
 喰われそうだ。

 そう思うのに、彼の瞳が綺麗でそらせない。

「藤崎日菜乃」

 鷹士さんが話しかけてきた。
 ほとんど、息だけの囁き。
 私しか聞こえないだろう。

「君を逮捕する」

 え?

「罪状は騒乱罪、窃盗罪、殺人教唆」

 どういうこと?
 意味がわからないまま、鷹士さんをじっと見る。
 彼も私と目を合わせたまま、膝まづいてきた。

 周囲がざわりとするなか、鷹士さんの唇が動く。

「日菜乃ちゃん、愛している。結婚しよう」

 ポケットから取り出したビロードの小箱から、指輪を抜いて私の薬指に嵌めてくれた。

 ざわめきが一層大きくなった。
 ピューイと口笛が聞こえ、すぐにしぃっと誰かに叱責されて止む。

 みんなが、見ている。


 
 
 
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