警視正は彼女の心を逮捕する
「僕は荒れたよ。寂しさを埋めるため、色々な女性と付き合った」

 綾華さんが言っていたことと一致する。
 ……でも。
 ちっとも嬉しくないのは、なぜなんだろう。

「僕の不行跡を見咎めた父が、ようやく君との同居を許してくれた。嘘のように僕は心が落ち着いたよ」

 彼が私の顔を覗き込んでくる。

「日菜。結婚なんて鎖に縛られないで、僕の傍にいてくれないか?」
「……私に。愛人になれと……?」

 我ながら、怒りに震えている声が聞こえる。
 悠真さんは、最大の侮蔑を放ったのだとわからないのだろうか。

 彼はにっこりと笑いながら首肯した。

「僕も日菜も結婚しているから、ちょうどいい隠れ蓑になるね」

 なんで、そんなに爽やかに言えるの。
 W不倫をしよう、と言ってるんだよ?
 そんなの政治家にとっては致命的じゃない。

「悠真さんには、綾華さんがいます」

 私が言うと、悠真さんはちょっと変な顔になった。

「ああ。綾華が君に『挨拶』に行ったようだね」

 ……悠真さんも、綾華さんもおかしい。

「綾華は元々恋人がいるんだ。身分違いで結婚できない男でね。それで契約結婚を持ちかけられた。僕も日菜がいたから、すぐ了承したよ」

 平然としている悠真さんに違和感しかない。
 それとも、気持ちが悪いと思ってしまう私が変なの?
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