警視正は彼女の心を逮捕する
そのまま、彼と一緒に暮らす
 ピピピピ。
 
「……ん……」
 
 携帯のアラームが鳴っている。
 朝が来たらしい、のだけど。
 頭が働かない。
 
「師匠に挨拶しないと」
 
 修行中のイタリアでは、師匠の家に下宿させてもらっている。
 
 イタリアは目に入る物全てが美術品に思えてしまうが、なかでも師匠のおうちは断トツ。
 百年以上前に建てられた古民家を移築したお宅で、物語の主人公かと勘違いできそう。
 住んでいるご夫妻が修復の専門家だけあって、隙間とか傷んだところはさりげなく、しかも芸術的に修繕してある。
 
 お庭も素晴らしい。
 こんなところで毎日暮らしていたら、センスが研ぎ澄まされるに決まっている。
 ここに住んでよかった。
 実家同然なのは宗方の家だけど。心の故郷は断然、師匠の家だ。
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