警視正は彼女の心を逮捕する
 鷹士は渡されたインカムを装着した。
 今度は逆探知及び音響係の捜査員達の準備が整ったのを確認して、携帯をアクティブにする。

「賀陽だ」
『僕にはわからない』

 虚ろな声が室内に響く。
 全員が悠真の言葉を聞き入る。

『日菜が僕を好きじゃないって言うんだ。……僕には彼女しかいないのに』

「ふ」

 ざけるな、と怒鳴りそうになった鷹士を課長補佐が慌てて制止してきた。
 鷹士はぐっと堪える。
 冷静さをかなぐり捨てた上司に、捜査員が注視した。

 悠真の、魂をどこかに置き忘れたかのような独白が続く。

『日菜を大事にしたいから、愛人になってくれと頼んだ。けれど、断られてしまった』

「……女性に圧倒的人気の『政界のプリンス』でも、振られるのか」

 誰かが軽口を叩き、途端に周りから叱責を受ける。

『綾華と結婚したことを日菜は怒っている。久しぶりに会えたのに、彼女は僕と会話するのも厭わしそうだった』

 
< 200 / 223 >

この作品をシェア

pagetop