警視正は彼女の心を逮捕する
 悠真さんに啖呵をきったものの、綾華さんからもらった『毒』は、厳然として在る。

 だって疑う要素しかない。
 地味な美術品マニアを、イケメンエリートが好きになる理由がない。
 
「……結婚に興味がなかったから、誰でもよかったのかもしれないし」
 
 でも。

「私は鷹士さんに『愛される喜び』を教えてもらった」

 そうだよ。
 落ち込んだときのホットチョコレートに花束やお菓子。
 演技だろうと、彼は私が好きなものを贈ってくれた。
 ……師匠のアリアだって。

『前にきたとき、“ヒナノを口説きたいから、彼女の好きな物をなんでも教えてほしい“ってお願いされたの。だから色々教えてあげちゃった』
 結婚式のとき、師匠がこっそり教えてくれた。

 涙がこぼれる。

「私は鷹士さんを愛してる」

 悩んでも、最後にはこの想いに行き着く。
 そして希ってしまう、『鷹士さんからも愛を返してほしい』と。
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