警視正は彼女の心を逮捕する
 ドアが乱暴に開かれた。
 現れたのは、鷹士さん。当たり前だ、彼の家だもの。
 心の苦しさを誤魔化すため、必死に咳き込む。

 そんなずるい私の背中を、鷹士さんは一生懸命さすってくれる。
 ……親切にしてもらっているのに、勝手に失望してしまったことを申し訳なく思う。
 
「大丈夫か!」
「……はい」
 
 咳の合間になんとか返事をする。
 
「ごめん、驚かせたね」
 
 申し訳なさそうな声。
 そんなことないと言わなければ。喘鳴の合間に返事をする。

「だい、じょぶです」
 
 なんとか落ち着いて顔を上げた。
 すると、鷹士さんの顔が目前にある。

 彼の弾んだ息に紅潮した頬。
 整っていながら男らしく精悍な顔に、汗で張りついた髪。はっきり言って悩ましい。
 朝から、なんて色っぽいの!

「日菜乃ちゃん?」 
「きゃっ」
 
 イケメンの威力に、飛びのいてしまった。
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