警視正は彼女の心を逮捕する
 微妙な空気を撤回するべく、取り決めの続きをする。

 掃除道具や洗剤は共用財布を作って、そこから出す。
 食材は基本は自分の分だけ。

「俺は大抵朝の七時には家を出る。帰りは会議や会食がなければ定時だけど、ほぼ会議が入ってる」

 だから、ご飯は作らなくていいという。

「え?」

 さっきと言ってることが違う。楽でいいけど。

「いいんですか?」
「そのかわり、二人でいる時は一緒に食べるってどう?」
「……それなら」

 つい、承諾してしまった。

 自分の買い込んだ食材の、賞味期限が近かったり大量に余っている時は、相手の分も作ってもいいことにする。

「なるほど」

 シチューとか、おでんとか。
 大量に作ったほうが美味しいものってあるし。

「調味料はどうしますか」

「おそらく、日菜乃ちゃんのほうが俺よりレパートリーがある。君が買いたいものを、共用財布から出してくれればいい」

「わかりました」

 ざっと見れば塩胡椒、みりんにお醤油が揃っているから、なんとかなりそう。

 二時間経って洗濯物も干し終わり、部屋の中がピカピカになったので出かけることにした。
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