警視正は彼女の心を逮捕する
「……意味わかってないだろう」
「ごめんなさい、なんて?」

 鷹士さんのほうを向くと、サングラスをしている。
 カッコイイなぁ。でも、私は眩しくないんだけど。
 ……運転手席は特別なのかもしれない。

「…………ペットボトルの蓋を外して渡してもらえるかな」
「わかりました!」
 
 *

 ショッピングモールの地下のパーキングに入る時もワクワクしてしまい、ハッと気づく。

「すみません、子供みたいにはしゃいじゃって」

 運転している人の隣で騒いで、迷惑をかけてしまった。

「大丈夫」

 掛けてくれた声が優しくて、ほっとする。
 パーキングからエレベーターで地上階へ上がった。

「うわあああ……!」

 大きい! 
 目を凝らしても端っこが見えない。
 どれくらいの店舗が入ってるんだろう。
 イタリアでも日本でも画材のお店や図書館、本屋しか立ち寄らないから、とても新鮮だ。

 おのぼりさんみたいにキョロキョロしまくってたら、鷹士さんに声をかけられる。

「さて。日菜乃ちゃんの茶碗とか、カップとか見ていこうか」
「え?」
「このフロア、和食器の店とインテリアショップも入ってる。先に和食器の店を覗いてみようか」

 私の物を買うの?
 まごついていると、鷹士さんは私の手を握って歩き出す。

「あの」
「日菜乃ちゃん、キョロキョロしすぎて迷子になりそうだから」
「う」

 ……なんで把握されているの?
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