警視正は彼女の心を逮捕する
 ……鷹士さんに手を引かれながら入った和食器のお店は、素晴らしくよかった。
 ショウウインドウは、着物を几帳がわりにして、野点に見立てた和食器が並べられている。
 興奮しながら店内を巡る。

 気に入ったお茶碗と湯呑みにお箸を見繕う。
 ティーカップやカフェオレ丼も買い物かごに入れた。
 ……同然のように鷹士さんが持ってくれるので、慌ててしまう。

「持ちます!」
「だめ」

 相手にしてもらえない。

「ウチ用に、料理用の皿もここで誂えてもいいな」

 呟きながら、なぜか鷹士さんもひょいひょい入れていく。

 気になる花瓶があった。
 目が離せなくなる。

「気に入った?」

 鷹士さんに話しかけられて、体が跳ねた。
 け、気配を感じなかった……! 私、そんなに夢中だった?

「じゃあ、これも買っちゃおう」

 ひょいと花瓶は持ち上げられて、カゴに入れられる。
 そのまま、レジに持っていかれてしまった。

「鷹士さん……っ」

 し、とばかりに指を唇の前に出した彼を見て、自分の唇を押さえられたことを思い出してしまう。
 ドキドキしていると、その隙に支払われてしまった。

 値札から、ざっと合計はいくらか計算していたので、お店を出てから一万円札を差し出した。
 しかし、受け取ってもらえない。
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