警視正は彼女の心を逮捕する
 お言葉に甘えて、ベンチに座る。

「……確かに、疲れた」

 でも、心地いい。
 鷹士さんとたくさん喋ってはしゃいで、普通に笑っている自分に驚く。
 バッグの中になにげなく手を入れたら、携帯に触れた。

「悠真さん」

 着信があるか、確認したい。
 誘惑をなんとか、ふりきった。

「……あるわけない」

 昨日は婚約者さんとお泊まりって言ってたもの。
 鷹士さんと一緒に過ごしていた時間、忘れていた痛みが蘇ってくる。

 心細くなって呟いてしまう。

「鷹士さん、早く戻ってこないかな……」

 この苦しさに捕まってしまわないうちに。
 私は鷹士さんがが歩いていったほうをずっと見ていた。

 
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