警視正は彼女の心を逮捕する
「お待たせ」

 鷹士さんが戻ってきた。
 花束とケーキの箱を抱えているイケメン、絵になりすぎる。
 周囲の人が見惚れている。もちろん、私も。

「車までこれ持ってて」

 花束を渡された。
 ……もしかして、これも『同居のお祝い』なのかな。
 花へ顔を寄せてみる。

「いいにおい」

 心が浮き立つような色彩に、優しい香りは歓迎してくれてるみたい。
 厄介者ではないようで、嬉しい。


「家に帰ろうか」

 沁み入るような笑みを向けてくれた。

「はい」

 だから、私も笑顔で応えられる。

 *

 夕日が差し込む車内は静かだ。

 邪魔にならない程度の音楽。
 どちらも喋らない。でも、沈黙が心地いい。
 なんとなく、鷹士さんもこの空間を楽しんでくれているような気がする。
 
 ……鷹士さんの住むマンションに到着したとき、『もう着いちゃった』と残念に思ってしまった。
 駐車場に車を納めて降りたときに、私が寂しそうな顔をしていたのか。

「日菜乃ちゃんが楽しかったと思ってくれるなら、なるべく時間を作って二人で出かけよう」

 柔らかい表情で誘ってくれた。
 わーい、やったー! ……と、子供の頃のようにはしゃごうとして、慌てて真顔を作る。

「……私、そんなに顔に出ていますか」

 つい、訊ねてしまう。
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