警視正は彼女の心を逮捕する
 おとといの夜から『私、口に出してたかな?』ってたびたび思った。
 それくらい、鷹士さんは私の思っていることをピタリとあててくる。
 いくらなんでも、すごすぎでは?

「これでも私、職場だと『修復品に向かっていない時は鉄面皮』とか言われているんですが」

 言った途端、吹き出されてしまった。
 なによう。

「真剣なのに!」

 ふくれっつらをしても効かないらしい。

 ……こんなとき、悠真さんはご機嫌をとってくる。
 気がつくと、彼の思い通りになっている。

 けれど鷹士さんはそんなことはしなかった。
 涙目になりつつ、なおも笑いが止められないらしい。
 彼はこんなに笑い上戸だったっけ?

「……やばい。日菜乃ちゃんといると、俺も綺麗売りできない」

 あ、またくだけた。
 嬉しいけれど、こんなにフランクな人だったかな。
 なまじ怜悧な顔立ちで落ち着いた雰囲気の人だから、ギャップが激しい。
 こんなところ見たら、好きになっちゃうよ。……人として、だけど。

「怒らないで」

 頬を膨らましたままだったようで、頭に手を置かれる。
 むうっと睨めば。

「ほんと日菜乃ちゃんてば、俺には『素』だよね。可愛いなあ」

 子供扱いされた!
 抗議しようとすると。

「……大人扱いされたい?」
 
 色気たっぷりの視線を投げられた。
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