警視正は彼女の心を逮捕する
 ……エレベーターが来るまで無茶苦茶気まずかったけれど、私だけだったみたい。

「昼の食べっぷりからして食欲戻ったみたいだから、晩飯期待してて」

 鷹士さんが、いつもの雰囲気に戻してくれたので、ホッとする。

「はい」

 鷹士さんの部屋へ戻った。
 私が洗濯物を畳んでいる間に、鷹士さんが料理を作ってくれた。

「日菜乃ちゃん、君の花瓶を借りたい。花を活けてもらっていい?」

 早速出番! 買っておいてよかった。

「わかりました」

 台所で水切り鋏を借りて、いそいそと花瓶へ活けなおす。

「ありがとう、こっちに持ってきて」

 言われるがままダイニングに持っていけば、すっかりテーブルの準備ができていた。

「うわぁ……!」

 つい感嘆の声を上げてしまう。

 フルーツサラダと、チキンが入ったサラダに、ローストビーフと魚のフリットにバゲット。色々なチーズもある。
 おしゃれ。そして手際いい!

「ご馳走ですね!」

 これはすごい。
 鷹士さんはいつもこんな食生活なのだろうか。
 どうしよう。
 私は明日の献立、煮物や焼き魚を考えていた。
 
 焦っている私をよそに、鷹士さんは優雅な手つきで、ワインをグラスに注いでくれる。
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