警視正は彼女の心を逮捕する
 *

 ……鷹士さんと同居三日目。

「私、馴染んでるなあ」

 正直、悠真さん以外の男の人と二人暮らしなんて無理だと思っていた。
 なのに鷹士さんは至れり尽せりで、とても楽。
 
「二人暮らしって、こんなに楽しいんだ」

 ふと言葉が出てしまい、ギョッとした。

 やだな、私。
 悠真さんのと暮らしは楽しくなかったみたいな言い方。
 慌てて否定する。 

「そんなことない! 悠真さんとの暮らしは」
 
 どうだったろう。

「楽しかった……というより、ワクワク!」

 少し違う。考えて、より心情に近い言葉がみつかった。

「そうだ、ドキドキしていた」

 なにをすれば悠真さんに褒めてもらえるかな、と一日中考えていた気がする。
 それは、どうしてか。

「悠真さんを好きだったから」

 でも、気が抜けなかった。
 ……ふと。おとといの晩、鷹士さんから言われていたことを思い出す。
 
『普段は綺麗売りしてながら、時々コミカルになる日菜乃ちゃんがすげぇ好き』
「『綺麗売り』ってなんだろう? ……ずっと緊張しているってことかな」

 いいことのような反面、なにかを演じているかのような表現にもとれる。

「私は、鷹士さんの前で取り澄ましていたってこと?」

 でも、一線を出ないって大事じゃないかな。
 昨日までの日々を思い返していたら、頬に血がのぼってくるのが感じられる。

「一昨日から、私。鷹士さんの前で、変なことしかしてないよ……」

 
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