【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。


 お母さんは「じゃあ、コロッケでも作ろうかしらね」と言っていた。

「ごちそうさま」

 ケーキを食べ終えた私は、お風呂に入ってから眠りについた。


✱ ✱ ✱


「お母さん、祥太くん、もうすぐ来るって」

「あら、やだ! もうそんな時間?」

 迎えた結婚の挨拶の日、我が家がバタバタと慌てていた。

「なあ、絵梨紗、ネクタイどっちがいいかな?」

「え、ネクタイ?」

 お父さんはお父さんでネクタイの色と柄で悩んでいるし、朝からバタバタしている。

「絵梨紗、どっちがいい? 選んでくれ」

「もう、ネクタイなんてどっちでもいいよ!」

「良くないだろ! ネクタイは大事だ」

 ネクタイにやたらとこだわるお父さんに、私は「こっちのがいいと思う」とネクタイを選んだ。

「よし、じゃあこっちにしよう」

 お父さんはネクタイが決まると、すぐにリビングから出て行った。

「お母さん、手伝おうか?」

「あ、大丈夫大丈夫! 後はコロッケ揚げるだから」

「そう?」

 お母さんは私に「ほら、絵梨紗も支度してきな」と作業しながら声を掛ける。

「うん、じゃあ着替えてくる」

 部屋に戻り鏡を見ながら思う。七年前、私はショートカットだった。 
 今はセミロングの髪の長さで、うっすらとピンク色の髪になっている。 今思うと、あの時の私は幼かった気がする。
 七年経って私は、こんなにも変わった。 あの頃と比べて私は……。

「少しは……大人になれているかな」

 きっとなれている。あれからもう七年も経った。
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