【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。
祥太くんはもう何年も、お父さんと話をしていないと言っていた。 お父さんとはもう会うことはないかもしれないと、祥太くんは言っていた。
「お父さんとは……何の話をしたの?」
私がそう聞くと、祥太くんは「元気にしてるのか?って聞かれた」と答えてくれた。
「そっか」
「……でさ、俺父さんに話したんだ」
「話したって、なにを……?」
祥太くんはマグカップをテーブルに置くと、私を手を握る。
「……祥太くん?」
祥太くんを見つめていると、祥太くんは私に「絵梨沙、父さんに会ってほしい」と言った。
「えっ……お父さんに?」
「ああ。 父さんに、絵梨沙のことを紹介したいと言ったんだ」
え……本当に?
「そしたら父さん、日にちがわかったら連絡しなさいって、そう言ってくれたんだ」
そう話した時の祥太くんの顔は、少しばかり嬉しそうに見えた。
「お父さんが……そんなことを?」
「ああ。……正直、俺も驚いたよ。父さんがそんなことを言うなんて思わなかったしさ」
でも祥太くんにそんなことを言ったってことは、お父さん自身もきっと祥太くんが幸せになることを願ってるってことなんだと思う。
離れていても、祥太くんのお父さんはたった一人だけだ。 祥太くんに幸せになってほしいと思うのは、当たり前のことだと思う。
「それって、祥太くんのことを一番に思ってる証拠じゃないかな」
「え……?」
「やっぱり、お父さんはお父さんなんだよ。祥太くんのお父さんは、たった一人だけなんだよ」