【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。
私が祥太くんの手を握り直すと、祥太くんは「ありがとう、絵梨沙」と微笑んだ。
「絵梨沙……父さんに会ってほしい」
こんなに真剣な眼差しを向けられたら、もちろん私の答えは必然とこうなる。
「もちろんだよ。 私で良ければ……会わせてもらいたいな」
「……本当か?」
私は「うん」と頷いた。
「良かった……ありがとう、絵梨沙」
祥太くんはホッとしたような表情を浮かべていた。
「祥太くんは……お父さんと話せて良かった?」
祥太くんにそう聞くと、祥太くんはマグカップを再び手にして「そうだな……。良かったかどうかは、正直わからないな」と言っていたけど、その表情は和やかな感じに見えた。
「でもまあ……父さんも変わってなかったから、なんか安心した気はしたかな」
「そっか。 祥太くんもお父さんと話せたこと、嬉しかったんだね」
「え?」
「だって祥太くん、嬉しそうだもん」
その表情を見る限り、祥太くんはお父さんのことが気になっていたはずだ。 だからお父さんと話せたことが、何より嬉しかったんじゃないかなって思った。
「そうか? そんなことは、ないけどな」
「素直じゃないんだね、案外」
私がコーヒーを飲みながらそう言ったら、祥太くんは「いや、別にそういう訳じゃ……」と恥ずかしそうにしていた。
「ねえ、祥太くん。聞いてもいい?」
「ん? なんだ?」
「祥太くんが医者になりたくない理由って……本当は、お父さんを尊敬してるからなんじゃない?」
「……え?」