最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです

『この話を受けないのは馬鹿だ』

　しかしあの日になにがあったのかまでは胸の奥にしまう。

「家の相続のことでちょっといろいろあって……それが落ち着いたら行こうかな」

　わざと明るく告げると、信子はホッとした表情を見せた。

「わかった。なら、一段落したらまた教えて。絶対にだから」

「うん」

　念押しするような信子にうなずく。家のことが落ち着くのはいつになるのだろうか。二神さんにきっぱりと自分の意思を伝えたものの叔父や彼があっさりと引き下がるとも思えない。根比べしかないのか。ずいぶんな消耗戦だ。

「冗談ではなく、臨は彼氏を作ったらいいと思う。もちろん私も力になるけれど……そばで支えてくれる相手がいるとやっぱり違うよ？」

　そう話す信子は付き合って一年になる彼がいる。相手は同じ会社の人で、結婚も考えていると教えてくれた。

「矢代(やしろ)先輩とかは？　臨のこと、けっこう気に入っていると思うのよね」

「お世話にはなっているけれど、先輩とはそんなのじゃないよ。純粋に後輩としてよくしてもらっているの」

「そんなこと言っちゃってー。ま、いいや。だったら、ほら。やっぱり出会いを求めてやっぱり飲みに行かないと！」

　そこに話を戻すのが信子らしい。心配してくれる信子に感謝しつつ内心で彼氏、ましてや結婚など私には縁遠い話だと感じた。