最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 頭や頬なら幾度となく触れられたが、感じ方が全然違う。彼に触れられるたびに、その場所だけではなく、どういうわけか体の奥も熱くなっていく。

「んっ……」

 思わず声が漏れ、あとはひとりで脱げると抵抗しようとしたが、うしろから抱きしめられている体勢はどう考えても私に分が悪い。

 さらにはビスチェのホックにまで手をかけられ、驚きで声をあげる。

「た、貴治さん!」

 そこまでする必要はない、と続けようとしたが唇が重ねられ言葉を封じ込められる。

「臨は俺に甘えていたらいい」

 これは甘えるというのか。けれど締めつけから体が解放されホッとする。

 それからされるがままに脱がされ、どう考えてもあられのない格好なのに貴治さんに抱きしめられると、心地よさにどうでもよくなってしまう。

 ずっとくっついていたいのに、彼は私からそっと離れた。

「このままだと体を冷やす」

 続けて、ベッドに入るように指示され、従順に従う。ベッドの中に潜るとシーツのひんやりとした感覚に身震いしたが、すぐに彼の腕の中に閉じ込められた。伝わる体温に安心して、幾度となく口づけを交わす。

「んっ……う……ん」

 ほぼなにも身にまとっていない状態なのに、体が熱くてしょうがない。一方で、込み上げてくるもどかしさはなんなのか。

 私、きっとまだ酔っているんだ。

 自然と涙腺が緩み、必死に言い訳する。こんなふうに誰かを求めた経験なんてない。許されないことなのに。

「臨」

 けれど、彼から確かめるように何度も名前を呼ばれる。そのたびに、彼のそばにいてもいいんだと錯覚しそうになった。
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