最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「やはり病院に行くべきだ」
必要なやりとりや誓約書の記入を終え、叔父夫婦や従兄、貴治さんが呼んだ弁護士さんは帰っていった。私は左頬に保冷剤をハンカチで巻いたものを当て応急処置をしているが、貴治さんはずっと心配してくれている。
「だ、大丈夫です。大分腫れも引いてきましたし」
相手が本気ではなかったからか、私がすんでのところで反射的に顔をずらして直撃を免れたからか。
とはいえ治療費や被害状況を残しておくためには医師の診断書が必要だ。今日は日曜日なので開いている病院は限られているだろうから、明日にでも行こう。
「やっぱり、俺も一緒に実家に行くべきだったな」
「そんな、貴治さんはなにも悪くありません。私の方こそ、身内の問題に巻き込んでしまって……」
悔しそうにつぶやく貴治さんに、即座に返す。彼はなにも悪くない。むしろ私のせいで迷惑をかけてしまった。
「ひとまず、今日は帰ろう。昨日からぶっ通しで疲れただろ?」
落ち込む私に、貴治さんは優しく告げる。けれど私は、すぐに返事ができなかった。
「臨?」
私の様子を不思議に思ったのか、貴治さんは腰を屈め私をのぞき込むようにしてうかがってくる。彼の心配そうな瞳に決意が鈍りかけるが、私は彼を真っすぐに見つめた。
「……帰りません」
突然の私の告白に、貴治さんは目を丸くした。
「ごめんなさい。やっぱり私に契約結婚は無理でした」
この結婚生活は半年から一年という話だった。彼と結婚して、もうすぐ二カ月 になろうとしているから、過ぎ去ってみればあっという間だ。それでも、これ以上彼と夫婦を続けていく自信がない。
必要なやりとりや誓約書の記入を終え、叔父夫婦や従兄、貴治さんが呼んだ弁護士さんは帰っていった。私は左頬に保冷剤をハンカチで巻いたものを当て応急処置をしているが、貴治さんはずっと心配してくれている。
「だ、大丈夫です。大分腫れも引いてきましたし」
相手が本気ではなかったからか、私がすんでのところで反射的に顔をずらして直撃を免れたからか。
とはいえ治療費や被害状況を残しておくためには医師の診断書が必要だ。今日は日曜日なので開いている病院は限られているだろうから、明日にでも行こう。
「やっぱり、俺も一緒に実家に行くべきだったな」
「そんな、貴治さんはなにも悪くありません。私の方こそ、身内の問題に巻き込んでしまって……」
悔しそうにつぶやく貴治さんに、即座に返す。彼はなにも悪くない。むしろ私のせいで迷惑をかけてしまった。
「ひとまず、今日は帰ろう。昨日からぶっ通しで疲れただろ?」
落ち込む私に、貴治さんは優しく告げる。けれど私は、すぐに返事ができなかった。
「臨?」
私の様子を不思議に思ったのか、貴治さんは腰を屈め私をのぞき込むようにしてうかがってくる。彼の心配そうな瞳に決意が鈍りかけるが、私は彼を真っすぐに見つめた。
「……帰りません」
突然の私の告白に、貴治さんは目を丸くした。
「ごめんなさい。やっぱり私に契約結婚は無理でした」
この結婚生活は半年から一年という話だった。彼と結婚して、もうすぐ二カ月 になろうとしているから、過ぎ去ってみればあっという間だ。それでも、これ以上彼と夫婦を続けていく自信がない。