最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「そうすれば、家だけではなく土地も手に入る。悪い話ではないと思うが?」

「ちょ、ちょっと……ちょっと待ってください!」

 どうやら夢でも聞き間違いでもなかったらしい。けれど理解できない。

「意味がわかりません! この土地とあなたと結婚するのが、どう関係しているんですか!?」

 こればかりは私の理解力の問題ではないだろう。

「説明する」

 そう言って二神さんは、車の助手席のドアを開けた。たしかに三月とはいえ、夜はそれなりに冷える。

 家に上げるわけにもいかないし、ここで話していて叔父に気づかれたら厄介だ。

 悩んだ末、おとなしく彼の車の助手席に乗り込むことにする。

「お邪魔します」

 一応、断りを入れる。彼はなにも言わずドアを閉めると、運転席に回り込んだ。

 車内は見た目よりも広々としていて、黒を基調にしたラグジュアリーな造りになっている。車には詳しくない私が知っているメーカーだ。値段もそれなりにするのだろう。

 男の人の車に乗るの、初めてだ。

 今になって意識してしまい、心臓が早鐘を打ち出す。

 二神さんが運転席に乗り込み、エンジンをかけようとする彼を制す。アイドリング状態はよくない。車内はそこまで寒くなくエアコンを入れなくても十分に温かい。

 そう伝えると、二神さんは目を丸くした。おとなしく彼の言葉を待つ。

「結婚といっても一生の話じゃない。最低、半年。長くて一年。俺の妻になってほしいんだ」

 最初から期限付きの結婚だと聞かされ、ホッとしたような、納得したような。彼が生涯の伴侶として私を選理由などあるわけない。
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