最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
『母さんは、臨に自分を重ねていたところがあったみたいなんだ。でも臨は自分とは違うって。何事にも真っ直ぐに取り組んで、自身の状況を悲観ぶったり相手を責めたりもしない真面目で素直な臨を今は認めていて、むしろ気に入っているそうだ』

 貴治さんはお義母さんの思いを知っていたから、末永さんに勝手にすればいいと返したそうだ。

 お義母さんの私に対する態度は、相変わらず冷たいときもあるが、最近は照れ隠しもあるのだとわかってきた。

 パーティーが終わってからも、貴治さんが遅い日はもちろん、たまには今日みたいにふたりで実家を訪れ、お義母さんの料理を食べている。

 次期社長の妻としての心得はもちろん、最近はお義母さんのお義父さんに対する愚痴を聞いたり、私の仕事の話を聞いてもらったりと、いろいろ話をするようになった。

『もっといいものを身につけなさい』と言いつつ服やバッグ、アクセサリーなどセンスあふれるものを用意していて、持たせられるのも多々ある。

 今は結婚式の打ち合わせも兼ねていて、あっという間に話は進み、式は二カ月後 に行う予定となった。貴治さんが株主総会を経て次期社長に内定した発表も同時期に行うそうだ。

 お義父さんとは、相変わらずあまり会話はないが、早い段階から貴治さんが自分の意思で私との結婚を決めた貴治さんを見守る姿勢を取ると本人に告げていたらしい。

 最近は、経営手腕は衰えず貴治さんが丸くなり人当たりもよくなったと取引先の人からの評判もますますよくなり、お義父さんと貴治さんもそれなりに良好な関係を築いている。

 貴治さんを次期社長にする準備を進める中で、夫婦で過ごす時間も少し増えたとお義母さんが話していた。
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