最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「両親が君をどう思うか保証はできないが、俺は君を見下したりしていない」

 取り繕うとか、誤魔化そうとしている感じは微塵もしない。真面目な面持ちで告げられ、逆に私はどう返していいのかわからなくなった。

 そうですか、と素直に受け入れられず、目を逸らし小さく反論する。

「……でも馬鹿にはしていますよね?」

「この家を売らない頑固さは、な」

 素早い返事があり、少しだけ緊張を解いて軽く言い返そうと再び二神さんを見る。

「だから君を選んだ」

 ところが、こちらが口を開く前に彼の唇が動いた。

「この家を譲らない意志の強さは本物だと思った。手に入れたい気持ちも」

 あきれた様子も、面倒くさそうな言い方でもない。出会ってまだ二回目だけれど、彼が思ったことや感情をストレートに伝えてくる人なのは、なんとなく理解していた。

 おかげで、彼が今どんな気持ちで言っているのかはわからない。けれど少しだけ、私の想いを認めてくれた、そんな気がする声のトーンだった。

「で、改めて条件を呑んで俺と結婚するつもりはないか?」

 最初に結婚を告げてきたときの冷たさや傲慢さは、今度はなかった。そのせいで、私の心もつい揺れる。

「本人に直接確認もせず、叔父から聞いた情報だけで私を判断する人とは結婚できません」

「それは善処する」

 わざと不満を口にしたら、意外にもすんなりと非を認められ、逆に戸惑う。

 おかげで、なにかしら答えなくてはならなくなった。

 ぎゅっと握りこぶしを作って口を開く。

「……少し、考える時間をください」

 この家が手に入るとはいえ、結婚だ。期間限定の割り切ったものだとしても、そう簡単に決断できない。
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