最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「あ、よかったら……」

 カルペ・ディエムはご夫婦が経営しているイタリアンレストランで、温かみのある店の雰囲気と、伝統とオリジナリティが上手く融合された美味しい料理が人気だ。

 シェフであるオーナーには、今度うちの会社で出す新商品の監修をお願いしている。

 限定のペアディナーのコースメニューの中に、うちから出す新商品の元になった料理を出すそうで、気にはなっていた。それ以前に、私はずっとカルペ・ディエムに行ってみたいと周りに漏らしていたのだ。

「なんだ、あまり嬉しそうじゃないな?」

「そ、そんなことありませんよ! 機会がありましたら、ぜひ」

 矢代先輩の指摘をとっさに否定する。資料などを作成する中で、食べたことがあるのと食べたことがないのでは、言葉や伝え方も違ってくるかもしれない。

「わかった。商品開発部から枠を譲ってもらえたら、声をかける」

「はい。よろしくお願いします」

 頭を下げると、先輩は真面目な顔になった。

「言っておくが、仕事だからな。あとで印象や味を資料としてまとめて、提出するように」

「もちろんです」

 それ以外になにがあるのか。でも、以前のカルペ・ディエムに行ってみたい!と話していた私の感じからすると、先輩がそう言うのも無理はない。
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