最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
先に叔父夫婦に結婚を報告し挨拶に向かうと、予想通り手放しで喜ばれるはずもなく、裏があると怪しまれた。
『副社長、本気ですか? こんななんのとりえのない娘と……。失礼ですが、なにか臨が脅すような真似でも?』
『いいえ』
訝しがる叔父に貴治さんは涼しげな表情で答えた。すると叔父の隣に座る叔母が、侮蔑混じりの視線を向けてくる。
『昔からこの子は、同情を引くのが上手でしたから。姑も随分と苦労したみたいで……。よかったわね、臨ちゃん。あなたの境遇を憐れんで結婚してくれる人がいるなんて』
叔母の発言に私は唇を真横に引き結び、なにも答えずにいた。彼女の人柄は昔からわかっている。言い返しても無駄だ。
『同情なんて、とんでもありませんよ』
しかし貴治さんがきっぱりと言い返し、場は一瞬で静まる。続けて貴治さんが、二神不動産から叔父が提示されていた倍以上の金額を支払うと告げたので、叔父たちはそれ以上、余計なことは言わなかった。
思った以上の金額に、叔父夫婦は目の色を変えて舞い上がる。
『引き渡すまでに原状回復をお願いします。あなたたちご夫婦がここに暮らしはじめ、ずいぶんと仕様が変わったようですから。それらを含めての金額なので』
釘を刺すように貴治さんが付け足し、私たちはさっさとその場をあとにしたのだ。
「会社に行ってくる」
彼の言葉で我に返ると、貴治さんはさっさと踵を返し玄関に向かう。私は慌ててあとを追った。彼はちらりと私を見たが、なにも言わない。
玄関で靴を履く彼に、さっきから感じていた違和感を口にする。