最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 午後七時過ぎ。想像以上に遅くなってしまい、私は足早にマンションに戻る。

 実家に戻り、荷物は整理していたものの軽い気持ちで掃除を始めたら細かいところまで気になりだし、ついつい時間がかかってしまった。

 さらに買い物にも行き、食材を買い込む。

 貴治さんは、食事は別々でかまわないと言っていたけれど、タイミングが合えば一緒に食べてもいいだろうし、私ひとりで食べてもかまわない。

 そこらへんは臨機応変でどうかと提案してみよう。

 マンションに戻るとコンシェルジュに挨拶され、荷物を運ぶとの申し出を全力で断った。

 これくらい自分でできる。けれど、このマンションで住む人は、当然のように頼むのだろう。買い物だって、今はネットで外に出なくてもなにもかも手に入る。

 私、やっぱり場違いかもしれない。

 気恥ずかしさを感じながら直通のエレベーターの数字が増えていくのをぼんやり見つめた。

 貴治さん、帰っているかな?

 念のため、実家に戻る旨は連絡しておいたが、彼から返信はない。

 荷物であたふたしつつカードキーでドアを開けると、玄関の照明が自動でぱっと点いた。

 その際、彼の靴があることに気づく。どうやら帰っているらしい。

 途端にばつが悪くなるが、私はなにも悪いことはしていないはずだ。

 それでも早く帰ってくるとわかっていたら、夕飯をどうするか相談くらいしたのに。
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