最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 シャワーを浴び、寝支度を済ませてから再び貴治さんの様子を見に行く。

 息を殺して側によると、彼は規則正しい寝息を立てていた。薬が効いたのか、その姿に安堵する。

 おずおずと手に触れると、まだ熱い。ベッドに身を乗り出し、慎重に氷枕を冷たいものに取り替える。

「んっ――」

 そのとき彼が小さくうなり、うっすらと目を開けた。おかげで私は妙な体勢のまま硬直する。

 ぼんやりと視線がこちらを向き、ドキッとした。

「起こしちゃってごめんなさい」

「今、何時だ?」

 居た堪れなさに小さく謝罪すると、掠れた声で返された。

「午後十一時過ぎです。まだ熱があるみたいなので氷枕を取り替えたんですが……。お加減いかがですか?」

「大分マシになった」

 それはよかった。あとはとにかく寝ることだ。

 さっさと体勢を戻し、私も自室に戻ろうとする。

 ところが不意に貴治さんに力なく手を取られ、驚きで固まってしまった。けれどすぐに手は離れ、混乱しつつも尋ねる。

「あ、なにか欲しいものありますか?」

「いや……」

 視線を逸らされ、なにかの間違いだったと結論付ける。これ以上、私が側にいると貴治さんは休めないだろう。

 放っておいてほしいと彼も言っていた。私がしているのは、完全なお節介だ。
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