最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「……祖母を知らないのに、なんで言い切れるんですか」

 それなのに、つい反論してしまう。どうしてなのか、自分でもわからない。貴治さんがあまりにも迷いがないから? 表面的なお世辞などを口にしないと知っているから?

「言い切れるさ。臨を見ていたらわかる」

 私の心の葛藤などまるで関係ないといった様子で彼は告げた。

「確かに、おばあさんには会ったこともないし知らないが、祖母との思い出も家も大事にしている臨を見たら、わかる。臨も、おばあさんも幸せだったんだろうな」

 淡々とした口調は相変わらずなのに、こんなに言葉が胸にも沁みる。息が詰まりそうだ。

 なにか返したいのに、唇をきつく引き結ぶ。そうしないと、言葉とは違うものがあふれそうだったから。

 なにもできなかったのに、祖母はいつも優しくて、私を一番に考えてくれた。大学に合格したとき、就職が決まったとき、自分事のように喜んで、一緒にお祝いをした。記憶の中の祖母はたくさん笑っている。

 目の奥が熱くなり、視界が滲むのを乱暴に手の甲でぬぐった。

「ありがとう……ございます」

 笑顔を作り、貴治さんにお礼を声にする。

 祖母が亡くなってから、今初めて、少しだけ自分を許せそうな気がした。

 てっきり素っ気なく返されるかと思ったが、貴治さんはこちらをじっと見つめていた。その目が心なしかいつもより優しい。
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