最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 朝食を食べ進めながら、今日の予定に話を戻す。

「そ、それにしても期間限定の結婚とはいえ、貴治さんのご両親にお会いするの、は緊張します」

 異性と付き合った経験もないのに、もろもろをすっ飛ばして結婚の挨拶をするなんて……。

「あれこれ好き勝手言うだろうが、両親の言葉はすべて聞き流してくれ」

 最初からわかっていたが、どうやらいい感情を向けられることはなさそうだ。それなりに覚悟しないと。

 お箸を持もつ手にぎゅっと力が入る。

「念のため言っておくが、臨に問題があるわけじゃない。両親は二神不動産の次期代表の伴侶として自分たちの理想を押しつけてくるだけだ」

 自身の親とは思えないほど冷たい口調だ。

「両親には、幼い頃から俺は息子というより、二神不動産の跡継ぎとしてしか見てもらっていないんだ」

 貴治さんが漏らした内容に、目を丸くする。彼は自嘲的な笑みを浮かべた。

「父は仕事が忙しく、家庭を顧みない人間だった。たまに顔を合わせても、ろくに会話もしない。母はひとり息子である俺を父の跡を継ぐにふさわしい人間にするため、なにかとうるさくいつも厳しかった」

 私には両親がいないから、普通の親というのがどんな存在なのかはわからない。ましてや彼は二神不動産の社長令息として生まれてきたのだ。それでも、貴治さんの取り巻く環境を想像すると胸が締めつけられる。
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