最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「体調を崩しても心配されるどころか、情けないと叱られたよ。体調管理もできない人間が人の上に立てるのかって」

 貴治さんの声はいつも通りで、彼がどんな思いでしゃべっているのかまではわからない。ただ、いつも普段より饒舌な裏には、激しい感情が見え隠れする。

「成績から交友関係すべてに口を出されて、いつも俺自身の意思は二の次なんだ。大事なのは、いかに自分にとってメリットになるか。仕事も周りにいる人間も自然とそうやって見るようになった」

 ああ、そうか。おかげで彼の今までの言動が少しだけ理解できた。

『媚びを売る必要はないと言っているんだ。俺にどう接しても君にメリットはない』

『君ならこの家が欲しくて、下手に婚姻関係の継続を希望したりや感情に振り回されたりせず、こちらのいいタイミングでさっさと別れてくれるだろう?』

 自分の周りにいる人間は肩書きで判断し、損得勘定でしか動かないと思っている。だから数字や条件という客観的なものを最優先するんだ。

 黙っている私に、貴治さんが皮肉めいた笑みを浮かべる。

「そんな顔をしなくていい。今なら両親の考えも理解できるんだ。同情なら――」

「貴治さん」

 彼の言葉を遮り、改めてまっすぐに彼を見据えた。

「もしも私と別れたら、今度はちゃんと好きな人と結婚してください」

 突拍子もない私の発言に、貴治さんは目を瞠る。けれど、私は大真面目だ。
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