最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 貴治さんの実家は想像以上に大きく、豪邸という言葉がぴったりだった。さすが不動産会社を経営しているだけある。庭も駐車場も十分な広さがあり、建物も美術館か博物館を彷彿させるようなデザイン性あふれる造りだ。

 お手伝いさんに恭しく迎え入れられ、中に案内される。奥のリビングのソファには貴治さんのご両親らしきご夫婦が座っていた。ふたりの視線がこちらに向き、頭を下げる。

「初めまして、高松臨です」

「いらっしゃい、どうぞ」

 声をかけてくださったのは、奥さまの方だった。貴治さんに続き、テーブルを挟んでご両親の前に座る。

 貴治さんのお父さんである二神貴幸社長は先にホームページで顔写真をチェッしていた。写真から受ける印象通り、にこりともせず、厳しそうな人だ。

 本人を前にしても、漂う貫禄と威厳で会話が弾みそうな未来は見えない。貴治さんに似ている厳しい面持ちで、軽く一瞥された。

「息子から聞いています。あなた、ご両親がおらず、ずいぶんと苦労したそうね」

 口を開いたのは、貴治さんのお母さんだ。イヤリングやネックレス、指輪と高価そうなアクセサリーを身につけ、ロング丈の濃紺のワンピースとテーラードジャケットの組み合わせは上品で迫力がある。

 綺麗に染めている豊満な髪とくっきりとしたメイクは職場の上司を想像させた。

「両親はいませんが、祖母がいたので苦労はしていません」

 私はにこりと返す。しかし貴治さんのお母さんは、これ見よがしといわんばかりにため息をついた。
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