最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「でも金銭的には大変だったでしょう。 そうなると自然と結婚相手は求めるのは、経済力になるのかしら?」

 そこでお母さんはひと呼吸置き、私に冷めた視線を送ってきた。

「その点、息子は未来の二神不動産の次期代表だもの。言うことないわよね」

「母さん」

 たしなめる声をあげた貴治さんを、お母さんは睨みつける。

「正直、私はこの結婚に反対よ。末永(すえなが)のお嬢さんを勧めたのに、こんな勝手な真似をして……自分の立場をわかっているの?」

 そのままの勢いで、お母さんの矛先が向けられた。

「二神不動産の社長夫人の立場は、あなたが思うような楽なものじゃないの。あなたには、荷が重すぎる。貴治とあなたでは住む世界が違いすぎるのよ!」

 必死の形相で訴えかけるお母さんに、私はひたすら圧されるばかりだった。

「母さん、やめてくれ。俺が彼女との結婚を望んだんだ。二神不動産の後継者としては、十分な結果を出しているだろ」

 お母さんは、綺麗な顔をゆがめ蔑むような笑みを浮かべた。

「やっぱり、貴治が自分で選ぶとろくなことがないわね。わかっているでしょ。あなたは私たちの言う通りにすればいいのよ。二神不動産の跡取りとして間違いばかり選んでないで――」

「そんなことありません!」

 お母さんの言葉につい声をあげてしまい、貴治さんもお母さんも、さらには二神社長の視線まで一手に引き受ける羽目になってしまった。

 しかし、私は想いを口にする。

「貴治さんは間違いばかりではありません。ご自身であらゆる可能性を考えて判断できる方です。ご自分や相手にとって最善を選べる人だから……私も救われました」

 彼にこの結婚を持ちかけられたときは反発心の方が強かったが、おかげで祖母の家を手放さずに済んだ。
< 49 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop