最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「ご両親の心配はもっともです。貴治さんの結婚相手として私は至らないところばかりで、正直自分が彼の妻になる重みまでは考えていませんでした」

 正直に白状する。

 どうせ別れる前提の期間限定中の結婚だ。そこまで覚悟する必要はない。でも、ご両親にとっては、そんな事情は知らないのだ。

「ですから、貴治さんの相手としてすぐに認めていただくのは難しいと思っています。でも、がんばりますので指導ください。どうぞよろしくお願いします」

 勢いよくまとめて、はたと気づく。一方的にしゃべりすぎてしまった。

 さっと血の気が引いて、顔が強張る。そのとき力強く肩を抱かれた。

「ふたりの気持ちは、よくわかりました。俺のことはなんと言ってもかまいませんが、彼女を貶める真似は許さない。これで失礼します」

 丁寧だが冷たい口調。さっきから、親子の会話にしては殺伐しすぎている。

「行こう、臨」

 立つように促され、ためらいつつも従う。ご両親に頭を下げ、踵を返そうとした。

「貴治」

 ところが、今までずっと黙っていた二神社長が口を開いたので貴治さんも足を止めて振り返る。

「なんですか、社長?」

 まるで職場だ。貴治さんの声には苛立ちと皮肉が込められている。

 張り詰めた空気に、緊張が走る。

 二神社長は真っすぐに貴治さんを見つめた。

「彼女を自分で選んだなら、その選択には責任を持て」

 咎めるというよりは、改めて確認するような口調だ。

「あなた」

 お母さんが、困惑気味に呼びかける。私としてもどう受け止めていいのか、わからない。

「最初からそのつもりです。今日はお忙しいところ、お時間ありがとうございました」

 貴治さんはきっぱりと言い切り、私たちは彼の実家を後にした。
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