最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
状況に頭がついていかないが、ひとまず持ってきていた彼の傘を渡す。
雨は相変わらず強く、屋根の下に人だかりができている。そこからマンションの方へ貴治さんと歩きだした。
人波から抜け出したところで、隣を歩く彼に尋ねる。
「お食事……本当によかったんですか?」
雨音に負けないよう、やや声を張り上げると、貴治さんの視線がこちらを向いた。
「かまわない。最初から行くつもりはなかったんだ。すぐに帰るって臨と約束したからな」
「そ、そんな。あんなの無視してくれていいんですよ!」
私、ただの契約上の妻なんですから。
そう言いかけて口をつぐむ。声にしようとしたら、どこからともなく痛みが押し寄せてきたからだ。
「も、もったいないですよ。カルペ・ディエムの限定ペアメニュー、すごく人気で、なかなか予約が取れないのに……」
誤魔化すように、わざと違う方向へ話を持っていく。
「詳しいんだな」
そこで、うちの会社がカルペ・ディエムと共同で商品を開発していることや、そのつながりで特別限定メニューの席を営業から譲ってもらえるかもしれず、叶えば職場の先輩と行く予定にしている旨などを話す。
「そんなに行きたいのか?」
「はい。でも私が、というより本当は……祖母を連れていってあげたかったんです」
ぽつりとつぶやいて沈黙が降りる。続けて、一方的にしゃべり続けてしまったと後悔する。
雨は相変わらず強く、屋根の下に人だかりができている。そこからマンションの方へ貴治さんと歩きだした。
人波から抜け出したところで、隣を歩く彼に尋ねる。
「お食事……本当によかったんですか?」
雨音に負けないよう、やや声を張り上げると、貴治さんの視線がこちらを向いた。
「かまわない。最初から行くつもりはなかったんだ。すぐに帰るって臨と約束したからな」
「そ、そんな。あんなの無視してくれていいんですよ!」
私、ただの契約上の妻なんですから。
そう言いかけて口をつぐむ。声にしようとしたら、どこからともなく痛みが押し寄せてきたからだ。
「も、もったいないですよ。カルペ・ディエムの限定ペアメニュー、すごく人気で、なかなか予約が取れないのに……」
誤魔化すように、わざと違う方向へ話を持っていく。
「詳しいんだな」
そこで、うちの会社がカルペ・ディエムと共同で商品を開発していることや、そのつながりで特別限定メニューの席を営業から譲ってもらえるかもしれず、叶えば職場の先輩と行く予定にしている旨などを話す。
「そんなに行きたいのか?」
「はい。でも私が、というより本当は……祖母を連れていってあげたかったんです」
ぽつりとつぶやいて沈黙が降りる。続けて、一方的にしゃべり続けてしまったと後悔する。