最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 午後五時からパーティーは始まった。二神社長が挨拶し、役員たちが順にひと言ずつ述べていく。そこには貴治さんの姿もあった。

 結婚した旨については触れず、二神社長からもとくになにもなかったので、下手に公表して注目を浴びることはなさそうだ。

 結婚を知られたら知られたで、別れた報告をしなくてはならない。それはそれで大変だろう。

 自由に歓談の時間となり、貴治さんは私の隣に戻ってきた。

「ここに来るまでに何人かに結婚について尋ねられたから、臨を紹介してもかまわないか?」

「はい」

 そのために、今日はここに来たのだ。

「貴治くん、二神社長から聞いたよ結婚おめでとう」

「ご両親も喜んでいらっしゃるでしょう?」
 新庄(しんじょう)不動産販売の社長夫妻に挨拶する。大らかでよく笑う新庄社長と妻の公子さん。共に六十代のご夫婦で、奥さまの趣味は確か日本舞踊だ。

「おふたりは、どういったきっかけでお知り合いに? やっぱりご両親を通してかしら?」

 公子さんの質問に、私ではなく貴治さんが口を開く。

「いいえ。仕事を通して知り合いました。私が彼女と結婚したいと思い、なんとか口説き落として結婚してもらえたんです」

「まぁ」

 公子さんは感嘆の声を上げにこりと微笑む。あまりにもさらりと言ってのけられ、顔が赤くなりそうなのを、私はうつむき気味になり必死で隠した。

 その様子を見て新庄社長は、ははっと笑った。それから、新庄社長と貴治さんは仕事の話で盛り上がり始める。
< 83 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop