最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「あ、いいえ。前に話していたカルペ・ディエムの特別ペアディナーの席を、急遽営業から一枠いただけることになって。一緒に行く職場の先輩から都合を確認する連絡でした」

 続けて水曜日は夕飯がいらない旨を伝えようとした。しかし貴治さんの顔はどうも渋い。

「一緒に行く相手は男なのか?」

 唐突な質問に目をぱちくりとさせた。

「はい。入社以来お世話になっている先輩で……」

 なんだかんだでよく気にかけてもらっている。

「大丈夫なのか?」

「え?」

 貴治さんの質問の意図が読めずつい尋ね返す。

「仕事とはいえ、男とふたりで夜に会って。そもそもその男と行かないといけないわけじゃないだろ?」

「そ、それは……。ただ食事を楽しむだけではなく、仕事として行くと釘を刺すためといいますか」

 レポートを出す必要もあるし。仕事の視点で料理を見るのが目的だと思っている。

「アルコールが入って、今みたいな状態になったら、どうするんだ」

「お酒は飲みません!」

 即座にきっぱりと返す。

 今日は本当に特別だった。けれど貴治さんは、どうも納得していないようだ。

「勧められたら飲むんだろ? 断るのは失礼だって」

 先ほどの私の言葉で返され、押し黙る。彼がどうして不機嫌なのか、なにが気に障ったのかわからない。

 こんなふうにお酒のせいで迷惑をかけているから?
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