村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

「全く。好奇心旺盛なのはいいことだけど、危ない場所にまで近づいていくから、目を話せないわね」

文句を言いながらも母親の顔は嬉しそうだ。
葵のと同年代の他の子たちを見ていても、まだまだ発育が遅い子も多い。

栄養不足でいつも顔色が悪い子供もいる。
そんな中で、料理屋の娘として産まれた葵はまだ恵まれている方だった。

着るものや家具は貧相でも、食べるものだけは絶やさないからだ。

そのため母親の母乳も出も良く、ちょくちょく他の親がねだりにくるほどだった。

そんな葵はすくすくと成長しているように見えたけれど、母親にはひとつだけ懸念があった。

「あ、ほらまた」
少し目を離したすきに葵がタンスにぶつかって大泣きし始めてしまった。

母親は慌ててかけよってケガがないか確認する。
少しコブができているけれど、血は出ていないようで一安心だ。

「どうして囲炉裏やタンスがある方向へ行こうとするんだうねぇ？」