白雪姫は、もう目を覚さない

「もう、通りかからないと思った」

突然、背後から声がして、心臓が跳ねた。

振り返ると、微笑む彼女がいた。

なんでこんなタイミングで。
てか、なんでそんな嬉しそうに声掛けてくるんだよ。

俺なんかに、そんな顔すんなよ……

「……通りかかっただけ」

喉が乾いて、言葉がひっかかった。
ごまかすように言ったけど、自分で聞いてても下手くそだった。

彼女はすこしだけ笑って、「うん。ありがと」って言った。
まるで、俺の気持ちを全部見透かしているみたいに。
< 25 / 27 >

この作品をシェア

pagetop