白雪姫は、もう目を覚さない

第8話 やりたいことリスト

彼の声は、少しだけ苦しそうだった。

「通りかかっただけ」

そう言った彼の言葉は、不器用で、
どこかに戸惑いがある、そんな言葉。

それでも、私は嬉しかった。

私のことを覚えていてくれていた。
また会いに来てくれた。

みんなとは違う。

病室に来る人たちは、“来なきゃいけない”から来てくれる。
どこか“役目”みたいなものだった。

私自身を見てくれる人なんていない。

だから誰かに期待することをやめてた。

それなのに、彼は来てくれた。
“役目”ではなく、私自身を見て。
 
不器用だったけれど、その全部が、静かに胸の奥を温かくしていた。
< 26 / 27 >

この作品をシェア

pagetop