ありふれた日常こそ、尊い。

「え??どゆこと??」
「いや、そのぉ、、、母さんに恋人はいないのか聞かれて、"いる"って答えたら、紹介して欲しいって言われて、、、」
「え、何で恋人いるなんて嘘ついたの?!」
「まぁ、ちょっとわけがあって、、、。」

凪はそう言いながら、いつもと様子が違って深刻そうな表情を浮かべた。

「じゃあ、そのわけを聞いてから決める。今日、仕事終わったら飲み行こー!もちろん、凪の奢りだよね?」

わたしがそう言うと、凪は切なげに微笑み「はい、奢らせていただきます。」と言ったのだった。


そして、仕事終わりにわたしは凪と以前行ったことがある居酒屋へ行った。

「「乾パーイ!」」

まずは生ビールで乾杯。

仕事後のビールは身体に染み渡った。

「あー、美味しー!」
「美月、飲み過ぎんなよ?お前、酔うと面倒くさいんだから。」
「大丈夫!今日は、凪の話を聞きにきたんだから。で、お母さんに恋人がいるって、嘘ついた理由は?」

わたしがそう訊くと、凪は一気にかしこまった感じになり、お母さんに嘘をついた理由を話し始めた。

「実は、うちの母さん癌でさ。二年前に乳癌が見つかって、手術は成功したんだけど、定期検診で次は肺癌が見つかって、、、通院しながら治療は受けてるんだけど、あまり良い状態とは言えなくてさ、、、一年前、担当医に"余命二年"って宣告されたんだ。」

わたしは凪の話を聞き、言葉を失った。

まさか、そんなツライ話だなんて、全く想像していなかった。

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