ありふれた日常こそ、尊い。

わたしは帰宅すると、玄関のドアに鍵をかけ、リビングの電気を点けると「ただいまぁー!」と言った。

わたしは一人暮らしだ。
別にペットを飼っているわけでもない。

わたしが"ただいま"と声を掛けたのは、リビングの壁のど真ん中に飾ってあるffVIIリバ◯スに出てくるキャラクター"ザッ◯ス"の大きなタペストリーだった。

わたしは"ザッ◯ス"が大好きなのだ。

タペストリーに話し掛ける27歳なんて、ヤバい奴なのは分かってる。

でも、わたしにとっては癒しの存在なのだ。

それから飾ってあるのは、このタペストリーだけではない。

ffVIIリメ◯クとリバ◯スのグッズはもちろん、その他に好きなアニメのキャラクターのグッズで部屋は埋め尽くされている。

こんなオタク部屋、誰にも見せられるわけがない、、、

わたしはワンルームで、ベッドに寝転がりながらタペストリーのザッ◯スを見つめた。

こんなかっこいい人が現実に存在するわけがない。
そんなのは分かってる。

だから、わたしは、、、ずっと独身でいいのかもしれない。

27歳になっても現実に存在する人を好きになったことはなく、恋愛のし方も分からない。

「はぁ、、、そんなに飲むつもりなかったのに、つい飲み過ぎちゃった。」

わたしはそう呟くと、ベッドから起き上がり、シャワーを浴びにお風呂場へ向かった。

こんなわたしがあの凪の彼女のフリなんて出来るかなぁ。
普通の人を演じられるかなぁ。

でも普通って、、、どんな感じだろう。

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