Far away    ~遥かなる想い~
やがて、それとおぼしき女性2人組が姿を現した。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」


そう言って、うやうやしく一礼した彩に


「彩。」


と親し気に声が掛かる。ハッとして、頭を上げると


「来ちゃった。」


そう言って、胸の横で小さく手を振る、よく知った顔。


「由理佳さん・・・。」


高校弓道部の1年先輩、宮田由理佳だった。


「どうしたんですか?」


申し込みメールには、申込者の名前と連絡先、勤務先、それに同行の友人1名と記入されているだけだった。申込者の勤務先が由理佳と同じだとは思ったが、まさか由理佳が現れるとは、彩は思ってもなく、驚きを隠せない。


「この子が、彩のホテル見学に行くって言うから、同行させてもらったの。この子ほど、話が進んでるわけじゃないけど、私も完全な冷やかしじゃないから、今日はよろしくね。」


そう言って笑う由理佳に


「とんでもない。こちらこそ、よろしくお願いします。」


頭を下げた彩だが


(親友、元カレと来て、今度は先輩か・・・こんなに縁の深い人ばかり担当するプランナ-って、あんまり聞いたことないな・・・。)


内心戸惑いを覚えていた。


近しい人にビジネスモ-ドで接することには、やはり何度経験しても、戸惑いや気恥ずかしさはある。それに今回は心の準備もなかった。それでも仕事は仕事、彩は気持ちを切り替えて、案内を始めた。


平日夜のフェアはやはり、土日祝日のそれと比べ、参加者は少なく、ゆっくりと案内ができるし、落ち着いて話も出来る。ホテル内を歩きながら、主客である申し込み者だけでなく、由理佳も熱心に質問を投げかけてくる。そうこうしているうちに、時間はあっという間に流れ、一通りの案内を終えた彩は、2人を接客ブースに誘った。


「お疲れ様でした。本当はこの時間ですから、お料理もお出しできればよかったんですけど、今日はご用意できなくて、申し訳ございませんでした。よろしければ、今度はお休みの日に彼氏さんとご一緒にご来場下さい。」


そう言った彩に


「いいえ、いろいろ丁寧に教えていただいて、今日伺ってよかったです。ありがとうございました。」


と言う友人に続いて


「本当にありがとう。私は今度の瀬戸さんの結婚式の二次会に呼ばれてるから、またその時はよろしくね。」


由理佳も笑顔だった。


こうして、満足して帰宅の途についた2人を見送りながら


(由理佳さんもいろいろ熱心に聞いてたから。やっぱり斗真先輩とのゴールインも近いんだろうな。)


彩は、そんなことを思っていた。
< 175 / 351 >

この作品をシェア

pagetop