Far away    ~遥かなる想い~
それから約2週間、大地と麻美の挙式当日がやって来た。


寒さは厳しいが、空は雲1つない快晴。


(とりあえずは、天候は申し分なし。)


前日に行われたスペシャルブライダルフェアは大盛況のうちに終了。成約も目標数をクリアしたと、事務所は盛り上がっていた。


(このいい流れに乗って、今日の式も成功させないと。)


意気込んで出勤した彩。


「おはようございます。」


同僚に挨拶して、席につこうとすると


「あっ、彩。今日の瀬戸様と鯉沼様のお式に出席予定の本郷斗真様より、急なお仕事が入って、出席できなくなったってご連絡があったよ。」


という声が掛かる。


「えっ、そうなんですか?」


そんなに数は多くはないが、体調不良等でいわゆるドタキャンをする参列予定者は珍しくはない。だが、それがよく知る斗真だったことで、彩は驚きを感じていた。


斗真と大地は、高校は違っていたが、同じ弓道部でしのぎを削り合い、大学は同じになって、かなり親しい付き合いをしていた。今日はその当時の仲間たちと、披露宴で余興を披露する予定にもなっていた。


それに、彼の勤務先は証券会社で、当たり前だが今日は日曜で、証券取引所は休みのはずだ。


(どうしたんだろう?)


釈然としないものを感じたが、もっとも彩も斗真の仕事の全てを理解してるわけでない。よほどのことがあったのだろうと思い直し


「わかりました。」


と返事をした。


なんか出鼻をくじかれたような思いに捉われながら、準備を進めていると、本日の新郎新婦が仲良く到着の報が。


「お待ちしておりました。本日は、まことにおめでとうございます。」


恭しく出迎えた彩に


「ありがとうございます。廣瀬さん、本日はよろしくお願いします。」


と麻美が笑顔で答える。


「かしこまりました。それではプライズル-ムにご案内いたします。ですがその前に、お伝えしなければならないことが。本日、ご列席予定の本郷斗真様より、お仕事の都合で欠席するとのご連絡がございました。」


彩が報告すると


「俺の方にも今朝LINEがありました。本郷からはひょっとしたら迷惑をかけるかもしれないと、昨日のうちから聞いていたんで、残念だけど仕方ないな。」


そう答えた大地の表情は、やはり曇っていた。
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