推しは恋のキューピッド
そう言うと、がっちゃんは本当に急いでオフィスを出て行ってしまった。



「えぇ……まさかの展開。昨日はあんな答え聞きたがってたのに……」



ひとり取り残された私の後ろに想さんがそっと立つ。



「たぶんあいつ、察したんだろうな。何を言われるのか。聞いたら終わっちゃうから、あんな態度になったんだろうな。」



「そんな……じゃあ、私はどうすれば……!」



私は後ろに立つ想さんを振り返りつつ問いかける。
そんな私の問いに少し考えた後、想さんは口を開く。



「んー、まぁ俺も気持ち分からないでもないんだよな。
昨日の中森さんの電話、振られると思ったから最初出るのすごい怖くて迷ったし。……だから俺のために早く言わなきゃとかはいいからさ、あいつが答えを聞く心の準備ができてからでもいいのかもな。」




「心の準備か……」




「まぁ、さすがにそれで1ヶ月とか経っちゃったら困るから、その時は俺が羽交い締めしてでも聞かせるけどな。」



想さんはそう言いながら、自分のデスクへと戻っていく。




私もどうしたものかと思いつつ、自分のデスクに戻ると
晴香ちゃんが声をかけてきた。



「梓さん!野村さん何かあったんですか?」



「あぁ〜、ちょっとね。まぁ話すと長いからさ、
お昼のときとかに!」



私がそういうと、晴香ちゃんは頷き自分のパソコンへと視線を戻した。



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