推しは恋のキューピッド
どうやら早川課長に納得していただけたようだ。
良かった。
ホッと一息つき屋上に向かおうかと思うも、用事が済んだはずの課長はずっとその場に立っている。
不思議に思い、早川課長の視線を辿ると、どうやら私のお弁当をみつめている。
なんだろう…
私が不思議そうにしていると、早川課長は視線をあげ私の目を見つめた後、ふわっと微笑んだ。
え…
早川課長が…笑った…
一瞬時が止まった。
私がフリーズしているのも気にせず、本人は踵を返しサッサっとオフィスへと戻っていく。
もう横顔はいつもの無表情に戻っている。
「さっきのは気のせい?」
その場に立ち尽くし呟く。
でもあれは確実に笑ってた…
もともと端正な顔立ちだから、柔らかく微笑んだ表情は破壊力が半端ない。
そして川崎さんの言葉が脳裏をよぎる。
『中森さんと接してるときだけ、なんだか空気が和らぐ気がするんですよね。』
まさかね…
私はほっぺをパンと叩き気持ちを切り替える。
「腹が減っては戦はできぬ!だよ!私」
とにかく今は早川課長じゃなくて、こたろうさんのために仕事に邁進しなければ!!
私は屋上へと向かった。