大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

第26話 ミト危機一髪

コンコン。

物音にハッと目を覚ましたセルファ。
自分も寝てしまっていたらしい。

コンコン。

部屋の戸が叩かれる音だ。
ベッドを見ると、ミトは変わらず爆睡していた。
次に時計を見る。そして自分の目を疑った。
深夜の3時。
5時間も寝てしまったことになる。

コンコン。

更に戸は叩かれた。
セルファが部屋の戸を開けると、ミトの侍女のエイナと、その後ろにセイラムがいた。

「も、申し訳ありません。あまりに出てこられないので、どうされたかと思いまして…」

エイナはてっきりミトが出てくると思っていたので、セルファの姿にあたふたしてしまう。

「私がエイナ様に頼んだのです」

セイラムが前に出た。

「あの、ミト様は?」

遠慮がちにエイナが訊ねる。

「ああ、良く寝ているよ。私も一緒に寝てしまったようだ」

「も、申し訳ございませんっ!」

大恐縮してセルファに深く頭を下げるエイナ。

「いや、構わないよ。随分と疲れているようだね」

セルファは顔を上げるように促した。

「セルファ様、そろそろ王宮にお戻りにならなければならないのでは?」

絶妙のタイミングでセイラムが声をかける。

「ああ、ミトに手紙を残してくるから、少し待っていてくれないか」

「はい」

「セルファ様がいらっしゃってるのに寝てしまうなんて、ミト様がご無礼致しました」

「そんなことはありません」

改めて謝罪するエイナにセルファは慈悲を見せてから戸を閉め、大きなため息をついた。
全くどうかしている。5時間も寝てしまうとは。
ユフィーリオは王宮の部屋で待っているはずだ。
こんな時間まで戻らないことを、どう思っているだろう。
セルファは素早くメモにメッセージを残し、最後にもう一度ミトの顔を見た。

「本当に良く寝ている…」

思えばユフィーリオ以外の寝顔を見るのは初めてだ。
呑気を絵に描いたような寝顔にセルファは小さく笑い、そして部屋を出た。
エイナにもう一度労いの声をかけ、控えていたセイラムと王宮へ向かった。
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