大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

第34話 義務と既成事実

今夜はミトの部屋にセルファが来る日だ。
ユフィーリオは先日王宮に戻った。ということは、影は無事復帰したのだろう。
そう思いながら、もしかしたらセルファ本人が来るのではないかと、ミトは緊張しながら夜を待った。

もし、セルファが来たらアウトである。
ミトが未経験だとバレて、その経緯を追及され、影とミトは断罪されてしまうかもしれない。
さすがのミトも、影の顔を見るまで不安でたまらなかった。
早めに準備を済ませて、一人部屋で影を待つミト。

トントン。

いつもの時間、いつものようにドアがノックされる。
ミトは恐る恐るドアを開けた。
そこに立っていたのは…。

「会いたかったですよ。ミト」

「私もです。この前はありがとうございました」

笑顔で見つめあう二人。

「どうぞ、お入りください」

ミトは影を部屋に招きいれた。

(良かった!本当に良かった…!)

ミトは心底ホッとする。

「もう!心配したんだからね!」

ドアを閉め、ミトは影を睨んだ。

「自分の処遇を、だろ」

憎たらしい顔で影は言った。
いつもと全く変わらない影を見て、ミトは嬉しくなった。

「なんか久しぶり!すっかり元気そうで良かった」

ミトの笑顔に、影はなぜか動揺した。

「能天気なヤツだな。自分の置かれている立場、理解してんのかよ」

動揺を悟られないように、軽口を叩く影。

「わかってるわよ。すっごく焦ったもん。今夜セルファが来たら、もうおしまいって思ってた」

「よく乗り切ったじゃねーか」

「必死だったわよ。あんな思いもうこりごり。
あ、お茶飲むでしょ?今準備するね」

ミトはティーポットに茶葉を入れ、お湯を注ぐ。

「おまえさ、本当に自分の立場、わかってんのか?」

影はソファに座った。

「え?立場って?」

ミトは振り向く。

「こりごりとか言ってるけど、おまえはセルファの側室だろ?セルファと夜過ごすのは義務だろ」

「だからそれは…」

ミトは言いよどんだ。
影の指摘は正しい。
正しいけど、素直に受け入れたくないので、とりあえずお茶を影の前に差し出す。
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