大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「どちらに行かれたの?」

「いや、大した場所じゃないです」

まさかこの場でこの話題を出されるとは思っておらず、ミトは何と答えようか必死に頭を回転させている。

「あら、言えないような所へ行ったのかしら?」

「いえ、夜景を見せてもらっただけです」

「夜景?」

「はい、私が色々な場所を見たいと言ったら、夜の王宮の展望台に連れて行ってくれたんです」

とりあえず、簡潔にわかりやすい説明をミトは心がけた。
余計なことは一切言うまい。

「まぁ!随分と図々しいんですね」

これはアリアだ。

(目が恐いよ…)

反射的にアリアを見てしまい、ミトは後悔した。
もうアリアの方向に顔を向けるのはやめよう。

「セルファはとても優しいですから、どんなに公務で疲れていても、最大限要望に応えようとしてくれます。
ですので、ミト様。私たちはセルファのことを第一に考え、負担にならないよう配慮しなければなりません」

ユフィーリオは絶対的上位の立場でミトに指導した。

「はい…、もう二度と致しません…」

小さくなるミト。
本当は勝手にセルファから申し出てきたことだが、自分からお願いしたと言った方が場が収まると考えた。
ミトがシュンとしたことで、ユフィーリオは気が収まった。

(なんてこともない、あしらいやすい子。警戒に値しないわ。私としたことが、こんな子相手に何を不安に思っていたのかしら)

ユフィーリオは無理矢理そう自分に言い聞かせた。
最悪の雰囲気のまま朝食が終わる。
ミトは全く味がわからなかった。
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