大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「オレは完璧にセルファを演じることができる。おまえが別人だと訴えても、誰も信じてくれないだろうな」

どうやら男は完全にセルファになりきる自信があるらしい。

「それにここはローザンだ。おまえが何を言おうがどうにでもできる。
どうしてもオレが別人だと訴えたいなら好きにすればいい。ラミリアの姫は気が触れた、で済まされて終わりだろうけどね。
ラミリア王国も、変わり者の姫を大国へ送ったと、ローザンはもちろん他国からの信用ガタ落ちだろう」

「むむ…」

男の言うことは至極真っ当で、ミトは全く言い返すことができない。

「事情も知らないままオレに抗うより、事情を聞いて納得した上で諦めた方が、あんたのためだと思うけどな」

悔しそうなミトに、男は満足そうな表情を浮かべる。

「わかったわ…」

しばらく無言で考えたが妙案が浮かばず、苦々しい思いでミトは頷いた。

「とにかく、あなたが誰なのか、それをまず教えて」

ミトの問いかけに、男はなぜか少し緊張した表情になった。
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